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H.Shimazaki

ウクライナの国民的作家、アンドレイ・クルコフ氏がキーウでの生活について語る『英ガーディアン紙』(2022年4月5日)【抜粋・日本語訳】


日本でも『ペンギンの憂鬱』などの小説が翻訳され、名前が知られているウクライナの国民的作家アンドレイ・クルコフ (Andrey Kurkov) 氏(60歳)が、2022年4月5日付、英『ガーディアン紙』のインタビューに答えました。


ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続く三月、急遽、ロンドンを訪れたクルコフ氏。ウクライナ協会での講演会ほか、数々のマスメディアのインタヴューに精力的に出演し、ウクライナの現状や歴史、文化などについて語ってこられました。


今回の戦争が、これまでのどの戦争とも異なるのは、世界にリアルタイムで配信されている情報量が圧倒的に多いということです。ウクライナ政府による公式発表やSNS (ソーシャル・ネットワーク・サービス) で流れる情報に頼らず、英語圏を中心とした各国の信頼に値するメディアが、危険をかえりみずに現地入りし、直接取材した映像には、百聞は一見に如かずという説得力があります。


決死の覚悟でウクライナへ向かったフリーランス記者たちの尽力も称賛されるべきですが、お茶の間でよく知られる各局のアナウンサーやレポーターがこぞって戦時下のウクライナ国内から報道する様子から、視聴者はロシア政府のプロパガンダに惑わされずに真実を知ることができている、と言えそうです。


そして、記者たちとは逆方向にウクライナ国内からロンドン入りして生の声を伝え、再びウクライナへ戻るという離れ業をやってのけた作家クルコフ氏。以下、ジャーナリストであるヴィヴ・グロスコップ (Viv Groskop) 氏によるインタヴュー記事 (https://www.theguardian.com/books/2022/apr/05/im-not-scared-of-war-any-more-death-and-the-penguin-author-andrey-kurkov-on-life-in-kyiv) から、『ガーディアン紙』の著作権が許す500語までを抜粋および日本語に翻訳し、また前後の文脈が分かるように内容をまとめ、記します。











The cover jacket:


Andrey Kurkov, Grey Bees, translated by Boris Dralyuk (MacLehose Press, 2020).



【インタヴュー記事、全体のまとめ】

  • 携帯電話のアプリが、夜も空襲を知らせるため、皆、睡眠が損なわれている。

  • シェルターへと身を隠さないといけないが、そのうち状況に慣れてしまう。

  • クルコフ氏の小説は英語のほか世界30ヵ国語に訳され、もっとも成功したウクライナの作家である。

  • ロシアによる侵攻後、クルコフ氏はZoomなどの公開インタヴューで、戦況やウクライナの歴史について語ってきた。

  • クルコフ氏は、妻と息子のうち二人がボランティア活動を続けるウクライナに留まるつもりである。

  • ウクライナを支援するために、ノン・フィクション作品を読んでロシアとウクライナ間の歴史を理解して欲しい、とクルコフ氏は訴える。

  • ウクライナのゼレンスキー大統領に関して。コメディアンから転身した頃は支持していなかったが、侵攻後はできることをすべてやっている、と賛同する。

  • プーチン大統領に関して。西側諸国の政治家は経済的利益を優先してプーチン氏と良好関係を保とうとしたが、プーチン氏はすべてをないがしろにした。

  • クルコフ氏の両親は2年前に他界。クルコフ氏自身、ロシアで生まれ、ロシア語を母語とするが、ロシアに戻るつもりはまったくない。


【以下、英語抜粋および和訳】


But he has no intention of leaving Ukraine and tells me that he will be returning home in a few days. His English wife, Elizabeth Sharp, a teacher, is there, as are two of his three adult children. They are volunteering: working with refugees, teaching English. They all found themselves surprised at how quickly you adapt to the worst circumstances. “At the beginning, you’re in a state of shock,” he says. “But then you just adapt to it psychologically. I’m not scared of war any more. You just get this sense of fatalism. That what will be will be. And you just have to keep on living and do whatever you can in the circumstances. It does give you this kind of energy. And a conviction that it is possible to fight against a force of evil that is bigger than you are.”


それでもクルコフ氏はウクライナを離れるつもりがなく、数日で(ロンドンからキーウ郊外の)家に戻る予定だという。イギリス人で教師の妻エリザベス・シャープさんと、三人のこどものうち二人も残っている。避難民の世話をし、英語を教えるなど、ボランティア活動をしているのだ。家族はみんな、最悪の環境にも、どれほど迅速に適応することができるか分かって、驚いているという。「はじめは、衝撃を受けたままでした」とクルコフ氏は言います。「でも心はすぐ環境に適応していきます。私はもう戦争を恐れなくなりました。運命論を信じるようになるんです。起こるべきことは起こるのだと。だから生き続け、今ある環境の中でできることを何でもするしかないのです。運命を信じることで、このような活力が湧いてきます。そして、自分の力を上回る諸悪の力に立ち向かって戦うことができるんだ、と信じるのです。」


Kurkov does not appear unhappy to be a spokesman for the nuances of an entire culture, and he comes across as optimistic, motivated even. We meet at a cafe in north London, where the owner is very excited to serve someone from Ukraine and wants to express tearful admiration and bestow extra baklava, saying: “The Ukrainian people are an inspiration to us all!” Kurkov beams in response (“I know! My son can make a molotov cocktail! I’m so proud!”), even though this is a conversation he must now endure with every new non-Ukrainian he meets, as will probably be the case for the rest of his life. “I thought I’d lost my sense of humour,” he laughs, “but I was doing a public event last night and I found myself improvising all these sad jokes … Once the adrenaline gets going, you get your sense of humour back.”


クルコフ氏は、(ウクライナ)文化全体のあれこれを語る役割にやぶさかでないようだ。楽観的で、やる気満々にさえ見える。ロンドン北部にあるカフェで会ったのだが、オーナーはウクライナ出身のお客に給仕することに興奮した様子で、涙ながらに敬愛を示し、バクラヴァ菓子を一つおまけに付けて、こう言うのだ—『ウクライナの人びとは、我々みんなを鼓舞してくれていますよ!』 クルコフ氏は満面の笑みで返します—「そうなんですよ!うちの息子はモロトフ・カクテル(火炎瓶)を作れるんですからね!誇りに思いますよ!」—ウクライナ人でない人に会う度に繰り返す会話だったとしても、今や耐えていかなければならない。だって、こんな場面が残りの人生でずっと続くことになるのだろうから。「もう自分はユーモアの感覚を失くしてしまった、と思っていました」と、クルコフ氏は笑う。「だけど、昨晩、公開イベントに出ていて、こういった類の悲しい冗談を、即興で言っている自分に気づきました…アドレナリンが出てくれば、ユーモアの感覚が戻ってくるものです。」


Our conversation is in Russian, the language of his parents and of about a third of Ukrainians, because he is tired of speaking English. Russian is – and will remain – the language of his fiction.


インタヴューの会話は英語だとクルコフ氏が疲れてしまうので、ご両親とウクライナ人の三分の一が話すロシア語で行われた。クルコフ氏の小説はロシア語で書かれているし、これからもそうであろう。


(中略)


“A few weeks ago, on Facebook, there were hundreds of posts by people around my age who had lost their parents to heart attacks. All caused by the shock of the invasion. I don’t think my parents would have survived it, were they still alive.”


「数週間前、私と同年代の人たちが両親を心臓発作で亡くしたと、そういう投稿が何百とフェイスブックに寄せられました。ロシア侵攻によるショックが原因なんです。もし私の両親がまだ生きていたら、やはりこれを生き延びることはできなかったろうと思います。」


Kurkov was born in Russia, in what was then Leningrad, and is now St Petersburg. Does he think he will ever return to the country within his lifetime? “Well, I’ll be 61 years old soon. So … No. I’ve crossed Russia out. And Crimea. The newspapers in Russian have written about me as an enemy and a Russophobe. And we’re talking about a place where 80% of the population support Putin. So I have zero interest in visiting. I have no interest in their culture, their history.”


クルコフ氏はロシアの旧レニングラード、現在のサンクトペテロブルグに生まれた。生きているうちにこの国に戻ってみたいか、との問いに—「私はもうすぐ61歳になるんですよ。ですから…答えは、いいえ、ですね。ロシア国境を越えて、こちら側へ来ました。クリミア(に)も(行かないでしょう)。ロシア語の新聞はすべて、私のことを反ロシアで敵だと書いています。それにプーチンへの支持が80パーセントにもなる場所のことを話しているんですからね。訪れたいなんて気持ちは全くないです。彼らの文化、彼らの歴史など興味はありません。」



(日本語訳:H.Shimazaki)


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Disclaimer:


The above is the excerpts and my personal translation of "‘I’m not scared of war any more’: Death and the Penguin author Andrey Kurkov on life in Kyiv" by Viv Groskop, published on 5/4/2022 on The Guardian's website: https://www.theguardian.com/books/2022/apr/05/im-not-scared-of-war-any-more-death-and-the-penguin-author-andrey-kurkov-on-life-in-kyiv


I have translated the excerpts above from English into Japanese. I tried to be careful that the messages of Andrey Kurkov and the interviewer, Viv Groskop, would be faithfully represented in the Japanese language. However, in case of mistranslations, please let me know using the contact form as I may consider revisions.


This website is for non-profitable and personal use, and therefore the citation here is within the fair dealing of current affairs, also defined by The Guardian, which allows reuse of its articles up to 500 words. The copyright of the translated text belongs to the owner of this website. Thank you.

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