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イギリス第三次ナショナル・ロックダウン開始

Updated: Sep 4, 2021


2021年1月4日の英国ボリス・ジョンソン首相の発表で、三度目の全国規模のロックダウン開始が宣言されました。これまでも、英国のEU離脱問題で首相の声明が注目を集めることは多々ありました。しかし、国民のほぼ半数が生放送の映像を食い入るように観るようになったのは、Covid-19のために状況が目まぐるしく変化し始めた昨年の3月からでしょうか。4日の声明でも2400万人の視聴者が記録され、関心の高さが伺えます。変異種コロナウィルスが猛威を振るい、6日時点で一日の感染者数は6万2千人超え、死者も1041人に至る状況のため、現段階ではロックダウン終了の期日が設けられておらず、出口が見えない状況です。


英国では学期半ばにHalf Termという一週間の休みがあるため、今学期の休暇明け2月22日までにロックダウンが解除されることを、一応の目標としているようです。昨年の第一次ロックダウンは6月半ばまで続きました。この間、経済に深刻な影響を及ぼし、支援のために多額の税金を使い、学校も半年閉鎖されて教育に甚大な遅れが出たため、今回のロックダウンはなるべく早く脱出したいところ。第一次ロックダウンの際、制限が徐々に緩められたのは一日の死者数が100人以下になった時でした。しかし、はたして今回その状況まで短期間で持っていけるでしょうか。決め手は、ワクチン接種とロックダウンの効果にありそうです。


まずは、ワクチンですが、私の身近(イングランド南部)でもすでにワクチン接種を受けた友人が現れ始めました。NHS (National Health Service) の個人の医療記録に、健康状態が最も思わしくない脆弱なグループとして振り分けられた人、中でも80歳を超える高齢者がまずは通知を受けているようです。イギリスでは、地元の診療所に登録することで、ホーム・ドクターが決まります。普段、体調が悪い時には、まず主治医が病状を確かめ、その後、専門医へと送る仕組みです。今回のワクチン接種でも、まずは国から各地の診療所へ分配があり、診療所で優先する患者を決定しているようです。しかし、なぜか診療所によってワクチンが早く届いたり時間が掛かったり、あるいは割り当てられたワクチンの数や分配方法に多少ばらつきがあるように思えます。


日本でも配布方法が議論されているようですが、1回目の接種の後、どれだけの期間を設けて第2回目の接種を行うか、という点もイギリスで問題になっています。例えば、12月の半ばに1度目の接種を受けた人は、1月の前半に2回目の接種が予定されています。しかし、これでは未接種のまま待っている人たちに対して不公平になるため、2度目の接種までに3ヶ月開けて、他の人々にも均等に分配すべきである、という意見があるのです。


ジョンソン首相は1月5日の声明で、'the goal was that by mid-February, some 13 million people in the top priority groups — care home residents, all those over 70 years old, frontline health and social workers, and those deemed extremely clinically vulnerable — will be vaccinated' 「2月中旬までに、70歳以上の人すべて、また医療、社会福祉関連の仕事で最前線に立つもの、そして医学的に極めて脆弱であると思われる人々から成る、1300万人の優先者グループに属する人々がワクチン接種を受けられるよう目指す」と力強く宣言しましたので、期待しましょう。


次に、ロックダウンの効果について考えてみます。多くの国では、コロナウィルスの感染者と接触があった人、あるいは予防を兼ねて、14日間の自宅待機間を設けているようです。理論的には、皆が14日間外出を控えれば、周囲に感染させずに済むはずなのに、なぜいつまでも感染者が増え続けるのでしょうか。ロックダウンは封鎖令、つまり人や物の行き来を止めることですが、コロナ終息の気配がないということは、この行き来が続いているということですよね。


これには、国の政策と個人の事情とが複雑に絡み合っているような気がします。日本とイギリスは、どちらも島国で大陸の端っこに位置し、国土も同じくらいの規模。地理的な条件は似ています。しかし、日本では昨年3月末以降、コロナ感染者が多い危険地域(主にヨーロッパとアメリカ)からの日本国籍以外の人々の入国を、原則禁止にすることで、ウィルスの国内への流入を防いで来たのに対し、イギリスは国籍や特定地域からの入国禁止措置ということを、現在まで行っていません。ようやく5日の政府発表で、入国前にコロナ保持の有無を検査済みで陰性の結果を証明できること、という決まりができました。


中国や韓国など、日本が入国禁止を指定した国々は、対抗措置として日本人の自国への入国を禁止し、コロナウィルスの流入、蔓延を防いできました。これとは対照的に、ヨーロッパ諸国は、日本人など観光客やビジネス客を受け入れ、自国経済の活性化を図って来た訳ですが、結果は火を見るよりも明らかです。夏頃までせっかく鎮静化していたコロナウィルスも、人々の移動によって各地に拡散されてしまいました。日本でも同様に、夏秋にかけて国内のGo Toキャンペーンが推奨されて来ましたが、12月以降の急激な感染率の上昇を見ると、同じ問題に向き合わざるを得ないようです。それでも、イギリスの感染者や死者の数から比べれば、日本の方が封じ込めにはるかに成功しています。やはり厳しい入国制限を行ってきたオーストラリアやニュージーランドなどの島国が、感染者数を最小限に抑えて来られたことからも、国境封鎖がいかに重要であったかが分かります。



さて、イギリスの状況に話を戻しましょう。昨年3月末から6月中旬までの第一次ロックダウンは、それなりに効果があったと言えます。夏に向かって気候がよくなったこともあるのでしょうが、何より未曽有のコロナウィルスの世界的流行で、人々が恐怖と混乱に陥り、辛抱強く政府の指示に従って行動したことが功を奏したと言えます。しかし、この頃のロックダウンは非常に厳しいものでした。許された外出は、食料品の買い出しに行く時と、一日一回、一時間までの運動のみです。買い物も運動も一人で行わなければならず、自家用車で遠出することも許されず、見つかれば罰金。医療関係者や警察などの公務に就く者、スーパーなどに勤める人々以外は、ひたすら自宅待機を強いられました。病院さえ許可なしには立ち入りできず、コロナで命を落とす家族の最後も看取れず、葬儀も挙げられない。こんな状況が、国民に心理的ストレスを及ぼしたのは勿論のことです。


ところが、5月22日のマスメディア報道で、イギリス国民の緊張感が一気に解けてしまいました。当時、ジョンソン首相の最高顧問の立場から国政を指導してきた、ドミニク・カミングズ氏(Dominic Cummings)がロックダウンの規制を無視して、ロンドンの自宅から遠く431kmも離れたダーラムに住む両親を訪ねて、車で遠出していたことが判明したからです。しかも、事が起きた3月に遡ると、カミングズ氏はコロナウィルスに感染しており、仕事を共にする首相にうつしてしまったという疑いもあり。ツイッターやFacebookなどのソーシャルメディアでは、カミングズ氏に対する批判の声が多数上がりました。私たちは親の死に目にさえ会えなかったのに、指導的立場にある者が、隠れて法を犯していたなんて!


それからです。イギリス国民が、政府の指導を全く無視して、やりたい放題、自分勝手に行動するようになってしまったのは。(少なくとも私にはそう見えます。)当時、政府は段階的に規制を緩め始めましたが、他者と2メートルの距離を置くソーシャル・ディスタンスの奨めも、7月24日から設けられたマスク着用の法律も、室内で何人まで集まっていいという制約も(こちらは時期によって変動してきましたが)、最終的には個人次第。「自重」と集団行動を重んじる日本とは対照的に、イギリスは「個」と「他者との違い」を尊重し、受け入れる国。裏返すと、国家の一大事に規制なしには、とても収拾がつかない、という事情があるのです。


まとめましょう。今回の第三次ロックダウンは、コロナウィルス変異種の台頭と一日1000人越えの死者数という背景もあり、ジョンソン首相の緊急声明が出てから、この2日間、第一次ロックダウンの頃の緊張感、あるいは異様といってもいい雰囲気が、再び戻って来たように見えます。第二次ロックダウンが行われた11月5日から12月1日までの間には、子供たちの教育と心の健康を考えて通常通り開校したため、子供たちが賑やかに通りを闊歩し、レストラン等が閉まった以外には、通勤客もまだまだ多く、封鎖令が出ている深刻さが、まったく感じられませんでした。この間、学校や職場でマスクを外しては友人や同僚から感染し、ウィルスを自宅に持ち帰ると今度は家族にうつす、という悪循環が続いていました。12月には、クリスマス商戦のために、市街が賑わったことも感染拡大の原因でしょう。


今回は、日中、外を出歩いている者がほとんど見かけられず、スーパーも閑散としています。何だかんだと政府に文句をつけながらも、最終的には合理的な思考回路を備えたイギリス人。事業主に対する国の金銭的支援も日本より充実しています。厳しいところですが、ここは皆じっと我慢して自宅待機、感染率の上昇に歯止めを掛けて、少しでも多くの人が回復し、通常の生活を早く取り戻して欲しいものです。Stay safe!

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